法人決算・申告 Q & A 〜 決算から申告までの会社の経理の重要性
a−20. 「役員給与」でも損金算入できる場合

『役員に対する給与は、「一定の給与以外のもの」は損金に算入されない』ことは、分かりました。では、「一定の給与」であれば損金算入できるのでしょうか。その「一定の給与」について、具体的に教えて下さい。


@損金算入できる「役員給与」
- イ.「役員給与」でも、次の3つに該当すれば、損金算入できます。
(1)定期同額給与
(2)事前確定届出給与
(3)業績連動給与 - ロ.このうち、(3)業績連動給与は、利益に連動して給与を支給する場合の損金算入の取り扱いで、中小企業ではあまり利用されていません。
A「(1)定期同額給与」の2つの要件
- イ.定期同額給与は、役員給与を損金算入させる場合の、最も一般的な方法です。
- ロ.時期が「定期」で、金額が「同額」という意味で、以下の2つの要件を満たすようにして下さい。
(要件1)「支給時期」が、一月以下の、一定の期間ごとであること。
(要件2)各支給時期における「支給額」あるいは「手取額」が、同額であること。
B役員給与の改定
- イ.上記の「定期同額給与」の2つの要件を満たすためには、役員給与は、増額も減額もできなくなってしまいます。しかし、次の場合であれば、役員給与に改定があったとしても、損金算入できます。
- ロ.(1)「3ヵ月以内の改定」を図式にすると次の通りです
当期の期首から3ヵ月以内の改定で、その改定の前後でそれぞれ同額である場合です。3月決算の場合の、具体的な改定手順は下記の通りです。
■前期の決算(3月)後、当期の期首(4月)から3ヵ月以内(決算確定後の4月か5月か6月)に株主総会を開き、役員給与の増額あるいは減額を決議します。役員給与の「改定」とは、役員給与の金額を決定することをいいます。役員給与は、株主総会での決議で決まりますから、必ず株主総会議事録を残して下さい。
■増額あるいは減額後の、役員給与の「支給」は、株主総会決議の当月あるいは翌月(4月、5月、6月、あるいは7月)に行います。
■但し、中小企業の場合は、ほとんど2ヵ月以内に株主総会を開き改定の上、3ヵ月目から支給している場合が多いです。
- (2)「臨時改定事由」
役員の職制上の地位の変更等、やむをえない事情による改定です。例えば、役員が新しく入ってきた場合や、取締役から代表取締役への変更等、重大な変更があった場合です。この場合には、期首から3ヵ月以内の改定でなくても、役員給与の増額や減額の改定ができます。注意事項は下記の通りです。
■期中で新役員の就任等があった場合、定時株主総会に間に合わない時は、臨時株主総会を開いて、その就任等と役員給与の支給を議事録に残して下さい。
■役員給与は、使用人の給与と違い、「日割」はできません。役員は委任により就任し、役員給与は経営委任の対価です。使用人のように労働の対価ではありませんので、時間の経過に応じて支給額は増減しません。 - (3)「業績悪化改定事由」
業績が悪化した場合には、「減額」改定が認められます。この場合には、下記のように、「第三者」との関係が必要です。
■「株主」との関係上、業績や財務状況の悪化から会社の存続が危ぶまれ、経営責任上、役員給与の減額をせざる得ない状況にある。
■「取引銀行」との関係上、借入金返済のスケジュールの組み直しをし、役員給与の減額が盛り込まれている。
■「重大な取引先等」からの信用確保のため、経営計画書が策定され、役員給与の減額をした。
つまり、単に会社内の都合や、一時的に資金繰りが悪化している場合でも、業績悪化改定事由とは認められませんので、ご注意ください。
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