法人決算・申告 Q & A 〜 決算から申告までの会社の経理の重要性
a−22. 「役員退職給与」の取扱い

役員に退職金を支払う場合には、支給金額を適正にする為に、どのように計算すれば良いのか教えて下さい。


@役員退職給与の問題点
- イ.役員退職給与は、退職した役員に支給する退職金です。
- ロ.会社の経営主体である役員に対する退職金ですので、どうしても、従業員より多額になる場合が多く、その金額の妥当性が問題となります。
- ハ.会社に蓄えられてきた経済的利益は、当然、会社の経営主体である役員の功績による結果です。一方で、会社は本来、出資した株主のものであり、役員は単に株主から会社の経営を任されているという立場にしかありません。
- ニ.それにも関わらず、役員退職給与は、会社の経済的利益を、役員本人に直接的に帰属させてしまうという点で、問題があります。
- ホ.また、その経済的利益の額、つまり役員退職給与の額を、受取る役員自身が決定できるという点で、金額に恣意性が介在してしまい問題となります。
A不相当に高額かどうかの判断基準
- イ.「不相当に高額」な部分の役員退職給与は、損金算入されません。
- ロ.役員退職給与の額は、「役員が法人の業務に従事した期間」「役員の退職の事情」「その法人と同種の事業を営む法人で、その事業規模が類似する他の法人の役員に対する退職給与の支給の状況」等と照らして合わせて、判断されます。
- ハ.このような法令上の文言ですと具体的に分かりづらいので、実務的には、「功績倍率法」を用いるのが一般的です。また、「1年当たり平均額法」という方法もあります。
B功績倍率法
- イ.役員退職給与の金額の出し方として、「退職した役員の最終在籍月の報酬月額」に、「役員としての在任年数」と、「その役員の法人への貢献度等を反映した功績倍率」を乗じるのが「功績倍率法」です。
- (計算式)役員退職給与=最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率
- ロ.役員に対する退職給与の額が、不相当に過大ではないようにする為には、「最終報酬月額」が適性でなくてはなりません。従って「最終報酬月額」のうち、不当に高額な部分は除外されます。仮に、退職直前に何の根拠もなく報酬を上げたとしても、上げた部分は「最終報酬月額」とはなりません。
- ハ.「功績倍率」は、過去の判例および国税不服審判所の判決例により、目安として「代表取締役は3倍前後」で「取締役は1〜2倍程度」です。
- ニ.現実的な問題として、「功績倍率」は個別事例となりますので、役員退職給与が不相当に高額にならないように、合理的な範囲で決めて下さい。
- ホ.役員退職給与の支給額については、決定前に、税理士に相談される事をお勧め致します。役員への退職金の額は多大となることが一般的ですから、税務調査で否認された時に会社への影響も大きく、その後の対応も困難になるからです。
C「1年当たり平均額法」
- イ.「他の類似法人における、退職した役員の1年当たりの平均退職給与の額」に、「自社で退職した役員の勤続年数」を乗じて計算する方法です。
- ロ.単純な方法ですが、他の類似法人の平均退職給与額を把握する事は難しく、さらに、退職した役員の個別事情も反映されていないので、この方法を採用する会社は、あまりありません。
お問い合わせ

