法人決算・申告 Q & A 〜 決算から申告までの会社の経理の重要性
a−32. 弥生会計で経営分析−収益性指標(3)−
弥生会計で分析できる「収益性指標」の項目で、売上高売上総利益率について教えて下さい。
@売上高売上総利益率と原価率
- イ.【売上高】−【売上原価】=「売上総利益」ですが、売上原価を売上高で割ったのが原価率で、売上総利益を売上高で割ったのが、売上高売上総利益率です。
- ロ.例えば、ある商品を売ったら10,000円で、それを製造するのに売上原価が7,000円かかったとしたら、売上総利益は3,000円です。原価率は70%で、売上高売上総利益率30%ということです。
- ハ.売上高売上総利益率と原価率は、製造業、サービス業、建設業など、業種によって違いが大きいのが特徴です。
- ニ.中小企業庁が公表している業種別主要計数表をみると、製造業の場合はばらつきが大きく、売上高売上総利益率はだいたい20%〜40%程度です。建設業の場合には20%よりも小さい傾向にあり、サービス業の場合には40%より大きい傾向にあります。
- ホ.建設業の場合は、材料費や加工費など売上原価が非常に大きいですから、原価率が高くなり、その分売上高売上総利益率は低くります。
- ヘ.サービス業の場合には、原価はあまり発生しないので、売上高売上総利益率は高くなります。しかし、従業員の給料や事務所維持費などの販売費及び一般管理費が高いのが特徴です。
A売上高売上総利益率と付加価値
- イ.付加価値とは、その商品をその会社が作ったことにより生まれた、新たな価値をいいます。
- ロ.ある商品を開発して、それが非常に便利で、他に似たような商品が世の中に無かった場合には、皆が欲しがります。欲しがる人が多いほど、その商品の価格が高くても売れますから、価値が大きくなります。このように、その商品が持っている本来の価値を付加価値と言います。
- ハ.例えば洋服であれば、同じ商品の赤い服と黒い服とでは、同じ売上原価ですが、その年に赤い服が流行したとすれば、赤い服の方は高くても売れます。高く売れるほうが、付加価値が高いということです。
- ニ.赤い服の方が売上高が大きくて、黒い服と同じ売上原価であれば、赤い服の方が売上総利益は高くなります。
- ホ.具体的には、黒い服の場合に、売上高100で売上原価50の場合には、売上総利益は50ですから、売上高売上総利益率は50%です。一方、赤い服の場合には、売上高150で売上原価50の場合には、売上総利益は100ですから、売上高売上総利益率は66.6%です。
- ヘ.このように、売上高売上総利益率はその商品がもつ価値に左右されます。洋服のように、一時的な流行に左右される商品の場合には、高い売上高売上総利益率を長く維持することはできません。
- ト.一方、独創的な商品を新しく開発すれば、他社が似たような商品を作るのは難しいので、付加価値が高くなります。世の中に代替品が無いので、高くても売れる状態が長く維持されます。莫大な開発費をかけていたとしても、ヒットすれば、すぐに資金を回収できるのです。
- チ.しかし、似たような商品を開発するライバル会社が出現すると、商品が出回り、価格は下がってきます。商品が出回れば出回るほど、薄利多売の争いになり、売上高は下がってきます。売上原価は前と同じですから、売上総利益は下がり、売上高売上総利益率も低下します。
- リ.先程の赤い服の例で示せば、売上高が75に落ちれば、売上原価は同じ50のままですから、売上総利益は25に落ち、売上高売上総利益率は33.3%にまで低下してしまいます。