2011-10-20
東日本大震災からの復興のための臨時増税
−復興財源確保法案(仮称)の骨子を閣議決定
1.復興財源の基本的方針を閣議決定
与党民主党の野田内閣は10月7日の臨時閣議で、東日本大震災から復興するための財源を確保するため、復興財源確保法案(仮称)の骨子を閣議決定しました。
この増税法案は、今年度末までに国会での成立を目指しています。
10月20日に臨時国会が召集され、会期を51日間とする国会で、今後審議される予定です。
2.臨時増税法案の骨子
臨時増税法案は以下の通りです。
(1)所得税は復興特別所得税として、「平成25年1月から10年間」の期間で「納税額に一律4%の上乗せ増税」。
(2)法人税は復興特別法人税として、「平成24年4月から3年間」の期間で「納税額に一律10%の上乗せ増税」。
(3)たばこ税は復興特別たばこ税として、「平成24年10月から10年間」の期間で「1本1円の引き上げ」。
(4)個人住民税は、「平成26年から6月から5年間」の期間で「年間500円の引き上げ」。
(5)地方たばこ税は、「平成24年10月から5年間」の期間で「1本1円の引き上げ」。
■ 参考:民主党ホームページから政策 「第3次補正予算と復興財源の基本的方針を閣議決定」
http://www.dpj.or.jp/policies
3.具体的にわれわれ家計への負担はどうなるのか―その1「所得税」の増税
上記の臨時増税案で、1世帯当たりの「所得税」の増税額は、財務省の試算で以下のようになっています。
(1)日本人の平均世帯では
国税庁が発表した平成22年分民間給与の実態統計調査によると、男性の平均給与は500万円程度となっています。
仮に妻のパート代を100万円として、これに加えると、世帯収入は600万円となります。
世帯収入が600万円の場合、年間の増税額は1世帯当たり、5,200円〜7,700円となります。
(2)家族構成と世帯収入別
さらに詳細な試算を見ると以下のようになっています。
「夫婦と16歳未満の子供1人の、3人家族の世帯」の場合
(a)世帯年収が300万円なら、増税額は年間1,700円(月140円程度)
(b)世帯年収が500万円なら、増税額は年間4,900円(月400円程度)
(c)世帯年収が700万円なら、増税額は年間1万2千円(月1000円)
(d)世帯年収が1,000万円なら、増税額は年間3万1,700円(月2,600円程度)
(e)世帯年収が1,500万円なら、増税額は年間7万9,100円(月6,590円程度)
「夫婦と16歳未満の子供2人の、4人家族の世帯」の場合
(a)世帯年収が300万円なら、増税額は年間500円(月40円程度)
(b)世帯年収が500万円なら、増税額は年間3,100円(月250円程度)
(c)世帯年収が700万円なら、増税額は年間8,100円(月675円)
(d)世帯年収が1,000万円なら、増税額は年間2万6,700円(月2,225円)
(e)世帯年収が1,500万円なら、増税額は年間7万800円(月6,500円)
次のことが分かります。
・「年収」が多くなるほど税負担は増えるということになります。
・「家族数」が多いと税負担は少なくなっています。
・しかし、「年収」が多くなるにつれて、「家族数」による税負担の割合に差が無くなってきます。
この点を具体的に説明すると、年収300万円の場合は、「3人家族」の税負担は「4人家族」の税負担の3.4倍です。
しかし年収が1,000万以上となると、「3人家族」の税負担は「4人家族」の税負担の1.1倍程度で、ほとんど同じになっています。
4.具体的にわれわれ家計への負担はどうなるのか―その2 さらに「個人住民税」と「たばこ税」の増税
(1)個人住民税
個人住民税は年間で、定額500円の増税となります。
(2)たばこ税
復興特別たばこ税と地方たばこ税を合わせると、たばこ税は当初の5年間で「1本2円の引き上げ」となります。
厚生労働省の統計によると、日本人の2006年度の1日の平均喫煙本数は19.8本ですので、年間で7,227本になります。
従って、たばこ税は年間で14,454円の増税となります。
5.「消費税率の引き上げ」と「相続税の増税」が入らなかった理由
(1)消費税ついて
当初、消費税の増税も「復興の臨時増税案」に含めて検討されていました。
しかし元来消費税の増税分は、年々増え続ける「年金や医療などの社会保障の財源」に充てることが基本的枠組みとなっています。
今回の臨時増税法案は東日本大震災からの復興に限定されることから、消費税の増税は今回の臨時増税法案から外されました。
消費税の増税ついては民主党の政策である「社会保障・税一体改革成案」の中で、
2015年度までに段階的に国と地方を合わせて消費税率を10%まで引き上げることが基本的枠組みとなっています。
従って、消費税の増税も今後行われるだろうと予想されます。
(2)相続税について、
今回の臨時増税案は、増税の期間が一定期間内に限定されています。
もし、この期間中に相続することになった人だけが増税されてしまうと、税負担上不公平になります。
従って、今回の臨時増税案からは相続税の増税は除外されました。
そもそも相続税ついては、臨時増税案とは別に、平成23年度の税制改正案で増税となることが予定されていました。
しかしこの度の大震災でその成立が見送られていました。
来年度の国会の審議で「平成24年度の税制改正案」として成立される可能性が大きいので、相続税についてはそちらで増税となるでしょう。